とにかく広い!ウエスタンデジタルのオフィスに潜入
HDDマスターへの道①
老舗データストレージメーカーのウエスタンデジタル。1970年の創業以来、家庭用からデータセンター向けまで幅広い製品を手がけ、世界をリードしてきました。最近動画制作を始めてデータが増えがちな僕も、自宅PCのHDDで日々お世話になっています。
このたび、そんなウエスタンデジタルのHDD開発拠点である神奈川県の藤沢事業所への潜入に成功しました。我々のデータを支えるストレージはどんなところで作られているのか、バッチリ暴いていきましょう!
※潜入というのは演出上の表現であり、実際には取材許可を得ています。真似して無断潜入しないようお願いします。
とにかく広い!
ウエスタンデジタルテクノロジーズの藤沢事業所は湘南台駅から車で7分ほどのところにあります。

入り口にあるロゴ前で記念撮影をして、ゲートをくぐると…。
入って最初の感想は、「とにかく広い!!!」
上の写真、突き当りに見える建物も、右の建物も、左にある木のさらに後ろまで、ぜんぶ敷地内です。

駐車場もひっろい。モレラ岐阜か!(※いきなりローカルネタを突っ込んですいません。筆者の出身地の岐阜にある超巨大ショッピングモールです)
会社っていうかもう大学のキャンパスみたいな広さです。そのくらい広大。
というのも、ここはただの事務所ではないんですね。新技術や新製品の開発拠点でもあるのです。ウエスタンデジタルの心臓部といっても過言ではない。それを象徴するかのように……
たなびく社旗。
シンプルなロゴのデザインで、日の丸とのコーディネートもかっこいいな……と素直にときめいてしまいました。
ところで、旗って野ざらしで出しっぱなしというわけにはいかないですよね? 案内してくれた社員さんに聞いたところ「毎日掲揚してますよ」とのこと。手間暇かかってる! 愛社精神を感じます。
いよいよ建物の内部へ
さあ、いよいよ内部に潜入していきます。

こちらは受付。「カメラ持ち込み不可」の表示にも特権意識を感じてしまいます。今回は特別に取材OKをいただいているのでね。みんなカメラ持ちこんじゃダメだぞ!僕はいいけど!
その奥には、HDDの歴史がわかるショールームが。
ここ、実物とパネル展示を交えてHDDの原理や進歩が説明されており、本当に面白いです。その内容についてはまた次回レポートする予定なのですが、正直、今かなり人に言いたくなってます。でも次回まで我慢……!
代わりに今回ご説明したいのが、ウエスタンデジタルという会社について。ここではそのあゆみを簡単に振り返ってみたいと思います。
ウエスタンデジタルのあゆみ
ウエスタンデジタルが創業したのは1970年。米国はカリフォルニア州サンタアナで創業したそうです。
設立当初は今のようなHDD製造ではなく、MOS半導体の試験装置メーカーだったとのこと。そののちに電卓用チップでメジャーなメーカーとなり、現在も主力のHDD事業に参入したのは1980年代前半のこと。
1990年代からはHDD事業がメインとなり、現在のカラーシリーズの前身となるWD Caviarシリーズを発売。
その後、2011年に同じHDD事業のHGSTを、つづいて2015年にフラッシュメモリ事業のサンディスクを買収。この買収により、エンタープライズHDD、SSDやSD/microSDカードなど、強力なラインアップを揃えることができました。
そして今年2025年、HDD、フラッシュメモリのそれぞれの事業が成長したことで、ウエスタンデジタルは2つの企業に分社されました。
そのうちHDD事業を継続し新たなスタートを切る事となったのが、今回の訪問先であるウエスタンデジタルというわけです。
ちなみにHDDのメーカーは一時期80社もあったものの、現在は3社しか残っていないとのこと。それでいて近年のIoT化やテレビなど家電への搭載の影響もあって、ストレージに記憶するデータの量は年々増えています。
世界を支えるストレージメーカーとして、ウエスタンデジタルの重要性はますます高まっているといえます。先日も「BCN AWARD 2025」HDD内蔵部門で最優秀賞を受賞、その調査によると内蔵HDDでは52.4%と過半数のシェアを獲得しています。つまり店頭で買われている内蔵HDDの2台に1台はウエスタンデジタル。すごいことですよね。
社内探検は続く
さてウエスタンデジタルのすごさがわかったところで、ショールームを出て再びオフィス探検に戻りましょう。
個人的に老舗メーカーらしさを感じたのはこちらの部屋。
ここは会社の役員室が集まるエグゼクティブ・スペースだそうです。奥に見えるオレンジのドアが役員用の個室。ここで注目してほしいのが、逆サイドの壁面にあった……

写真左、「We.」の額縁。これはウエスタンデジタルの働き方のコンセプトで、「従業員同士がつながりときずなを築き、協力しながら業務を行う」という意味だそうです。で、この「We.」の文字を近くでよく見ると…
一つ一つがHDD…!!
サイズ的には長辺5センチ足らずと極小。これはミニチュアなわけではなくて、マイクロドライブといって、コンパクトフラッシュ(記録メディア)のスロットに入るようにつくられたデジタルカメラ用のHDDなんだそうです。そんなメディアがあったことも驚きだし、それがインテリアになってるのも驚き。HDDメーカーだけあって驚きも二重化されています。RAID1です。
もちろん一般社員用にもいい感じの休憩スペースがあります。
いやー、住みたいですね。コーヒーメーカーや給茶機もあり、何時間でも滞在できそうでした。
社員のお腹を支える社員食堂もありますよ。
これまたひっろい!モレラ岐阜のフードコートか!
ちなみに本社では1000人以上の人が働いているそうで、それだけの人数のお腹を満たすにはこの規模の社食が必要というわけですね。あいにく訪問時は営業時間外でしたが、社員さんが面白いものを見せてくれました。

レシート下部に摂取栄養素の情報が!さすがデータストレージの会社、データ活用には貪欲!
しかしこれ普通に嬉しいですよね。年を重ねるにつれて心に沁みてくるタイプの優しさです。健康、大事ですからね……。
そういえば屋外にも
テニスコートがあったり、

いたるところに鉄棒が設置されていました。テニスコートは3面もあり、取材時もテニスをしている社員さんが。鉄棒は僕が見ただけでも3カ所はあったのですが、見てわかるとおり、かなり上級者向けの高さ。「社員には懸垂逆上がりができるレベルで健康でいてほしい」という会社側のアツい願いを感じます。
さて話は食堂に戻りまして、そのすぐ脇には売店もありました。
せっかくレシートでカロリー管理したのを無に帰してしまいそうな、たい焼きと今川焼の安さ。おまけにシュークリームのセールまで。ここは目をつむって駆け抜けましょう、
そしていよいよ、ウエスタンデジタルの心臓部、開発拠点に向かいます。
開発拠点に潜入……!?
というわけでいよいよやってきました研究所。
実はさっきの社員食堂とも廊下でつながっているのですが、雰囲気を出すためにわざわざ外から回ってきました。こういうのってムードが大事ですからね!
でっかいロゴがド迫力です。
敷地も広大なら建物も長大。廊下のいっちばん奥に黒い点が見えますよね?あれ、廊下を歩いてる社員さんです。果てしなさが伝わるでしょうか。
そんな長い通路を横切って、いよいよたどり着いたのが研究所の最奥!
ですが…!!
なんと取材で潜入できるのはここまで~~!
これより奥はトップシークレットとのことで、カメラ所持特権が与えられた僕も通してもらえませんでした。見たかった~!!
開発製品の試作ラインはタイミングがよければ見学もできるのですが、残念ながら今回はお休みでした。
いやしかし、HDDってずいぶん昔からあって、形も外見上は同じだし、もう完全に枯れた技術なのかなって思うじゃないですか。でもこうやって「絶対取材NG」が出るほど、現役ゴリッゴリに最新技術の開発がおこなわれているんですね。
と、ここで思い出したのが、最初に訪れたショールームに飾られていた賞状の数々。
これはほんのごく一部で、実際にはこんな感じに賞状でいっぱいの壁面が何枚もありました。このほかにも、ウエスタンデジタルの新技術は公益財団法人 市村清新技術財団からの「市村産業賞」をはじめ、いろんなところから表彰を受けています。
HDDの技術ってもう確立しているようでいて、実はまだまだ大容量化、高密度化、そして用途の変化など、 チャレンジすべき課題はたくさんあるそうです。そういったハードルに果敢に挑むウエスタンデジタルの研究開発が、日々HDDの技術を進歩させているのですね。その歴史はまだまだこれから新章突入という段階です!それを先頭でひっぱっているのが、この藤沢事業所の社員さん達というわけ。
次回の記事ではそんなHDDの技術的な側面をご紹介できればと思っています。取材中、社員さんが語った「HDDはテクノロジーの塊」という一言が、個人的にすごく印象的だったんですよ。今回ショールームで見せていただき初めて実感したのですが、ほんとうにHDDってすごい機械なんです。たとえば、ディスクのデータを読み込むヘッドがあるじゃないですか。あれって実は……っていやすいません、この話は次回するんでした。もう人に言いたくてしょうがなくなってしまって。
というわけで次回をお楽しみに!
ライター:石川大樹(いしかわだいじゅ)
編集者・ライター、電子工作作家。「しょうゆかけすぎ機」「メガネに指紋をつける機械」などを制作。 「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。趣味はワールドミュージック収集です。
